東京の匠の技

建具

東京建具協同組合

友國三郎さん

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縦横に組まれた材は正しく直角に交わり、その継ぎ目は寸分の隙間もない。二つの材を外すと、それぞれの断面には繊細で緻密な手技の痕跡が見て取れる。正確に加工されたホゾと穴、さらには面取りを施した断面の滑らかな感触、そのいずれもが接合されたとき、建具製品の確かさ・美しさが醸し出される。建具の技の真骨頂であり、障子づくりにはその研ぎ澄まされた世界がある。

寸分の隙なく、組み込む

障子における“組子(くみこ)”とは、枠の内部の細い部材同士を格子状に組み合わせるパーツのことを指す。
「木と木を組み、縦と横の部材が交わるところを“組手(くで)”といい、高級な面取り障子では手の技能に加え、特殊工具を用います。組手加工の際には、精度を出すために“重能”という刃物を使い、その接合した面同士を45度の角度にぴったり合わせるようにします。このことを“組手腰”といい、継手は一分の隙間もないように仕上げるのが腕の見せどころです」
そして、“腰型”(こしかた)もまた、障子製作には欠かせない技法の一つである。腰型とは外枠の縦と横の框(かまち)を木組みする工法で、継手・組手といった手法であるが、主に二枚ホゾ(腰型)組み、二重ホゾ(腰型)組みなどと呼ばれ、接合部分の“胴付き”をうまく納めるために生まれた技である。
「一般に古くから高級で質感の高い建具に活用され、蛇口加工(馬乗り)よりも優れ、技術的にも接合部の強度をより保ち、温度や湿度変化による木の強弱(痩せたり縮んだり)、耐久性などに対応した技法でもあります。こちらもまた歳月を経てもなお、一分の隙間も生じないところが技の特徴となっています。」

仕切るものとして仕切るものとして

そもそも建具とは、建造物の外部と内部、あるいは内部を仕切るものとして、古くから用いられてきた。その歴史は古く、弥生時代の竪穴式住居にも、木を蔓で編んで開閉できるようにした仕切りがあった。
「今のような建具、障子は平安時代、明かり取りのため木と木を組み合わせ、それに紙を貼った障子が始まりとされます。その後、安土桃山時代、茶室に使われた数寄屋造り、その後、時代の変遷を経て、町人文化が花開いた江戸時代の後期より大きく普及し、一般化されたといわれます」
建具の領域は多岐にわたる。
「障子、板戸、硝子戸、襖、欄間、舞良戸、鏡戸、帯戸、格子戸、網戸、衝立、欄間をはじめとする組子製品、また現在では玄関ドア、室内ドア、フラッシュ戸、アルミサッシなども手掛けます。東京では職人の職域はそれぞれ決まっていて、例えば紙を扱うのは表具・経師屋、襖屋。建具屋は、障子は作っても、紙は貼りません。」

木と向き合う

建具の仕事は、木と向き合うことから始まる。
「天然の木材は、二つと同じものはありません。だから、気が抜けない。使う木をよく見て、どこをどの部分に使うか、一つ一つ見極め、一本の木材から必要な寸法の部材を切り取っていく。それを“木取り”といいます。」
大切なのは、よく木を見ること。
「特に、木表・木裏を瞬時に判断できる目を養うことが基本です。年輪の外側、つまり樹皮に近い方が“木表”、芯に近い方が“木裏”ですが、樹齢が古い芯の部分は、年輪の先端が硬く、反り上がって棘になりやすい。そのため、組子などでは、“木裏”は紙を貼る側にもってくるのが鉄則です。木の使い方も、建具となった時に立木の状態、つまり、木が自然の中にあった時と同じ状態で使います。」
木を部材として割り、それを再構成して建具に組み上げる際、木の生育と同じ状態で再現する。つまりそこには、元の自然が内包されている。それは日々、木と向き合う建具職人の、自然に対する敬意の表れのようにも感じられる。
「木を見て、その木をどう活かすかが職人の腕であり、技。そこにこだわりと面白さがあります。」
職人は、道具を持たなくなったら終わりという。
「仕事ができる間は、道具を置けません。仕上がりや出来は、己の欲。自分のこだわりや満足は、目に見えるものではないし、周りの人にわかるものではない、自己満足です。でも今まで、満足な出来と思えるものは、思い出す限り、記憶にない。職人は、欲深いのかもしれませんね。日々、仕事に向き合うこと。もし報われるとすれば、仕事が続けられること、それに尽きると思います。」
常に目の前の仕事と向き合ってきた、50年。その集積が、極めた技の細部に宿っている。

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東京建具協同組合
〒101-0042 東京都千代田区神田東松下町42
電話番号:03-3256-6576
公式ホームページ:http://www.tategutokyo.or.jp

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